相続分を決める方法
「遺言書を書いたから遺産分割協議をしなくて済む、トラブルも起きない大丈夫だ」と考え、遺言書を作成する方が多いと察します、その通りだとも思います。
しかし、遺言書の形式や内容によっては、遺言書があっても遺産分割協議をしなければならないことが起こります。
そこで今回は「相続分の決め方」について見て、次回は遺言書の形式や内容による失敗を防止できる方法を見ていきます。
「相続分の決め方」には次の3つのケースがあります。
1.遺言による相続分の指定をする場合
2.遺産分割協議による場合
3.法定相続分による場合(民法900条)
では上記の3つの場合を各々見ていきます。
遺言による相続分の指定をする場合
遺言者(被相続人)は遺言により相続分を定め又は第三者に相続分の指定を委託することができます。
また被相続人は共同相続人の一部の者についてだけ相続分を定めることもできます。
※この場合は残りの相続人は、法定相続分により相続分を決めることになります。
ただ、被相続人が全てを自由に定めることができるわけではありません。
相続人の生活の維持・期待の保護から相続人は遺留分(法定相続人の最低限の保証され
る相続の割合)の減殺請求をすることにより、侵害された部分を取り戻すことができま
す。
つまり、被相続人の思いと相続人(残される家族)の生活・期待の調和をとった規定があります(民法1046条)。
※ここでは詳しい説明を割愛させていただきます。
詳しい遺言書の書き方はこちら
遺産分割協議による場合
遺言による相続分の指定が無い又は無効の場合に相続人全員の話合いによって相続分を決めるというものです。
ですから、遺産分割協議は共同相続人全員の参加と全員の一致が無ければ成立しませ
ん。
この全員一致によっては法定相続分と異なった割合において相続財産を分割できます。
主な例として、長男が被相続人の生前に家業の維持発展に貢献し、今後もその家業維持のために寄与分として相続財産を長男に集中するといった場合。
もう一つが被相続の生前に相続人の一人が多額の贈与を受けていた場合に特別受
益として、相続財産への持ち戻しの処理等が挙げられます。
以上のことから分割協議による方法が最も柔軟に分割が行えるので、最も多く採用
されています。
法定相続分による場合
遺言、遺産分割協議がなされない場合には、法律で定められている相続分の割合である法定相続分による方法となります。
相続分の割合決定においては、中心的位置を占めております。
例えば遺留分の算出において、この法定相続分が算出基準となり、実質的には相続人間の分配の取り決め・合意の最後の拠り所として存在意義を持ち続けているといえます。
相続人間で特に揉めていることもなく、遺産分割協議をする必要のない場合は、この法定相続分のままで相続することが多いです。
つまり相続人間で争いがない場合あり、また相続財産が預貯金だけのような法定相続分通りに分割することが容易な場合に適しているといえます。
しかし不動産などのような、法定相続分通りに相続してしまうと共有状態になってしまうような財産の場合は相続後の処分が複雑化してしまうので遺産分割協議の方法をお勧めします。
まとめ
・遺言による方法は、被相続人の積極的意思実現を目的とするものといえます。
・遺産分割協議の方法は遺言が無い場合(無効である場合も含む)に残された相続人が全員参加・全員一致で相続分を柔軟に決めていくのに適していると言えます。
・法定相続分による方法は相続人間で揉め事もなく、協議をする必要のなく遺産が相続
分通りに分割できる場合に適していると言えます。
このポイントを参考に分割方法を選択されることをお勧めします。
無効な遺言の場合は遺産分割協議による分割方法が必要となってきます。
最期の意思を遺言書で実現するには、有効な遺言書の作成が必要となります。
それを踏まえて、次回はその有効な遺言書を作成するための形式や内容による失敗を防止するための方法を書いていきます。