相続税の基礎控除額についての基礎知識

相続

はじめに

被相続人が亡くなり、その遺産が相続手続により相続人に承継されます。

その場合、承継した財産に一般的に発生する税、つまり相続税について見ていきます。

詳しくは、税の専門家に相談していただくとして、社会人として知っておくべき一般的知識について書いていきます。

一、相続税の概略

相続税とは、亡くなった人の遺産を相続や遺贈等によって取得した人に対して課せられる税金のことです。                                            これには「基礎控除額」が設定されているため、すべての相続に対して課税されるわけではありません。                                             つまり、遺産総額から計算する課税価格が下の式で算出する基礎控除額より少ない場合には申告・納税ともに不要です。

基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

相続税は相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内に税務署に納める必要があり、住民税や固定資産税のように納税通知書が届くわけではなく、自分自身で税額を計算し申告しなければなりません。

その相続税は対象額の一定額を超えた部分に対して高い税率が適用される課税方法が採用されています。

相続税の速算表を載せておきますので、参照願います。

【相続税の速算表】

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

<参考:No.4155 相続税の税率|国税庁>   

では具体例でみてみましょう。

Ⅹさんが1億円の財産を残して亡くなり、残されたのは妻Yと長男A・長女Cの3人とします。

まず、基礎控除額は相続人3人なので次の計算式になります。

 3000万円+(600万円×3人)=4800万円・・・基礎控除額は4800万円となります。

次に相続財産1億円から基礎控除額4800万円を差し引いた額5200万円が課税対象となります。

それでは相続人各自を見てみますと

5200万円を配偶者Yが2分の1=2600万円、子供AとCが4分の1(1/2÷2人)=1300万円ずつ相続し、それぞれの金額に対して税金が決まってきます。

では、ここで上記の【相続税の速算表】を使いそれぞれの相続税を算出してみます。

妻 Y    =  2600万円・・・(2600万円-控除額50万円)× 15%=382.5万円

長男A    =  1300万円・・・(1300万円-控除額50万円)× 15%=187.5万円

長女C    =  1300万円・・・(1300万円-控除額50万円)× 15%=187.5万円

以上、各自右端の□内の金額となります。

二、基礎控除額を計算する際のケース別にみる検討

これまで見てきたのは主に法定相続人の数による検討ですが、他の複雑なケースも見ておきます。

1.養子縁組による「子」がいる場合

  養子は実子と法律上同じに扱われ相続権もあります。

 基礎控除を計算する場合、課税上の問題つまり、相続税を逃れるために、養子を増やすことへの規制 が設けられています。

イ)実子がいる場合は、養子1人まで基礎控除額の計算に入れることができます。

ロ)実子がいない場合は、養子2人まで基礎控除額の計算に入れることができます。

2.法定相続人が先に亡くなっているとき、その子(孫)が相続を引き継ぐ(=代襲相続)場合

この場合は、人数の数え方に注意が必要となります、亡くなった子に子供3人(孫)がいれば、他の法定相続人の数に、上記の例では代襲相続人である子供(孫)3人をプラスした人数で基礎控除額を算出することになります。

では<具体例>でみてみましょう。

妻Yと長男A・長女Cの3人が相続人である場合に、長男Aが被相続人Ⅹより先になくなり、「子3人=代襲相続人」がいる場合

基礎控除額=3000万円+600万円×5人・・・6000万円となります。

※5人=(妻Y + 長女C + 代襲相続人である3人の子供)

3.相続放棄した相続人がいる場合

  相続において相続放棄した人は、初めからいなかったものとして取り扱われます。

  しかし、相続税の基礎控除を計算するには相続放棄した人も法定相続人に含めます。

  また、先順位の相続人が全員相続放棄をすると、次順位の相続人に相続順位が移ります。

  しかし、この場合基礎控除の計算は相続放棄をする前の人数で計算することになっています。

  では<具体例>でみてみましょう

  先の例の長男Aと長女Cが法定相続人であった場合に、2人が相続放棄した場合、次の相続順位とし    て被相続人の父親Zがいて法定相続人となったとします。

この場合、父親1人だったとしても基礎控除の計算では前の法定相続人の人数(この例では2人)で計算することになります。

AとCが相続放棄 ⇒ 次順位のⅩの父Zが1人で法定相続人となった場合・・・前順位者の2人で計算

まとめ

最後に相続税の計算において控除・特例が上に述べてきました基礎控除の他にもあります。

➀配偶者の税額軽減 ➁未成年者控除 ③障害者控除 ④相次相続控除 ➄小規模宅地等の控除・特例等です。

しかし、相続税の基礎控除額は法定相続人の人数により変動し、また代襲相続及び相続放棄等により法定相続人の対象・範囲も変わる複雑な面はありますが、それでもやはり相続税の基礎控除はすべての相続税の計算において使える最も基本的なそして金額的にも大きな控除であるといえます。                          

そこで、繰り返しますと、遺産総額から計算する課税価格が基礎控除額より少ない場合には申告・納税ともに不要となることを頭に置いて相続の対策・計算にあたっていただけるなら望外の幸せです。

その対策・計算時に税の専門家に相談されることで、よりよい結果にたどり着くことができることも付け加えておきます。           

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